敬愛する植田真梨恵さんがブログやSNSとかでたまに、こんなことを言うことがある。
「やっぱり人と話さないと自分が何考えてるかわからないな」
うーん、そうかぁ?
自分が何を思い考えているかなんていうのは、自分が一番よく理解しているでしょ
自分が一番よく理解しているから、ブログやSNSでそれを発信できるわけで。
そうは思うものの、なんだか自分の中でどこか引っかかるものがあった。
というか、実際のところどうなんだろう、という思いもあった。
ところが昨日、引き出しにしまったままにしていたその植田さんの言葉を引っ張り出す出来事があった。
昨日は車ではなくバスに乗って、古町どんどんへRYUTistとNegiccoのライブを観に行った。
素晴らしいことに、古町どんどんではこの2組が無料で観れてしまう。
素晴らしい新潟。
ライブは楽しく、RYUTistは曲を聴くきっかけにもなった。
久々の古町。学生の頃、就活やら何やらで新潟をリサーチに来ていた時は、GAINGROUNDに行きたくてよく足を運んでいた。
それから実際に新潟に住むようになってからは、長岡だったこともあり、だんだんと古町に訪れること自体がなくなっていった。
それゆえ、古町の商店街通りを歩くと、新潟に憧れていた頃のキラキラした気持ちが蘇ってくる。
ゲインに行くのも、もう6、7年ぶりくらいになってしまった。
おそるおそるお店まで歩みを進めると、店頭のベンチに店主のタチバナさんが座っていて、Twitterを更新している。
「ちはー」と言って中に入ると、当時と変わらない店内の並びと芳香剤の香り。
ゲインから足が遠のいてしまったことの一つに、輸入盤の取り扱いが少なくなってしまったことがある。
以前は国内と輸入盤で半々の陳列だったが、曰く卸の倒産により仕入れができなくなってしまった、とのことだった。
ゲインで買ったものでよく覚えているのは、PropagandhiのFailed States。これがきっかけで、硬派なメロコアやハードコアを好むようになった。
そしてPUPのThe Dream is Over。タチバナさんがTwitterで激推ししていて、当時ポップパンクに片足突っ込んでいた自分はどハマりした。
まあ自分にとっての思い出というのはそんな程度のものだが、それでも、パンクやハードコアを新潟古町から発信し続けるお店の存在というのは、一介の音楽オタクからしても心強いものである。
そんなことを反芻しながら、棚を眺めていると、輸入盤コーナーにやたらTILTが置いてある。
欲しいと思った時に全然どこにも売ってなくて、すっかり買わずじまいになっていたので、テンション小上がり。
結局2ndを買うことに(これがメロコアかと思いきや渋メロディックでオタク感涙)。
レジに持っていき、Twitter用の写真を撮影。
タチバナさんは私が着ていたTシャツを見て、当たり前のように「Turnstileいいよねー」と話しかけてくれた。
タンスタが共通言語になることの嬉しさは、ゲインとなみ福でしか味わったことがない。
「最近新譜出しだんだっけ?」という問いかけに、
「去年か一昨年に新譜出しましたね。なんか色んなフェスに出てて、すっかり売れっ子になっちゃいましたね」
と返した。
話題はそこで終わってしまって、商品を受け取り、店を後にした。
自分はTurnstileやハードコアの話をしたかったのだけど、自分の口をついて出たことが「すっかり売れっ子になってしまった」
ということで、自分で思っていたはずのことと違うことを発言していて、自分の中で戸惑いが生じた。
まあ会話が下手であることはさておいて、自分がTurnstileに対して「新譜まじかっけえ」とか「Gravityまじ最高」とかじゃなくて、
「売れっ子になってしまった」という思いが一番に来ていることに驚いてしまったのである。
たぶん前者の応答をしていたら、もっと会話が弾んでいただろうし、おそらくタチバナさんもそういう応答を想定していたんじゃないかと思う。
まあ確かに、好きなんだけど、しばらく聴いてはいないな。
このわずかなやり取りを経た後で、植田さんの言葉がふと思い出され、その意味を思い知ったのだった。
本当に自分が思っていること、考えていることって何なのだろう。
口から出たこと、言葉にしたことが自分の中にあるすべてなのだろうか。
きっとこれがおそらく、孤独の限界というものなんだろうな。